人・組織で備えたい“トリの目” 〔第2回〕:「自分は間違っていない」と主張する部下に、次の成長ステージにあがらせるには?
本コラムでは、TMW講師陣が、ビジネスにおいてトリの目を持つとは何か、それはどんな意味を持つかなどトリの目に関わる話題を扱ってまいります。
「自分は間違っていない」と主張する部下に、次の成長ステージにあがらせるには?

むっつりした顔で席にもどってきたところを見ると、また、一騒動起こしてきたらしい。「どうした?」と声をかけると、堰を切ったように言葉が飛び出してきた。「あの部門はけしからんのです」。
腕は立つ。だが、折り合いをつけるのが、どうもうまくない。相手の立場を考えないで、一方的に言い立てて、向こうの神経を逆なでしてしまうのだろう。課のミーティングでもそういう傾向がある。態度を改めるよう何度か話をしたが、効果はない。正しいことを主張して何が悪い、そう思っているようだ。
チームのメンバーはさまざま、一長一短ある。うまく組み合わせて、それぞれの良いところを発揮させるやり方もあるだろう。たとえば折衝ごとは他の者にやらせるなど。だが、かりにそれで目先がうまくいったとしても、これでは先は見えている。チームがほんとうに強くなるには、一人ひとりに一騎当千になってもらわなくてはならない。
では、「自分が正しい」と思っている部下にどう働きかけるのか?必要なのは気付きである。それぞれの仕事の意味、それぞれの役回り、それを果たす上での考え方ややり方の是非。
気付きはそれぞれの内側からやってくる。「そうか、そうだったのか」、ある日ある時、はたと膝を打つ。霧が一気に晴れたように、これまでの問題点、これからどうしたらよいかがはっきりと見える。これまでの自分についての自責の念もないではないとしても、気分は爽快である。「もう一度、やってみよう」、そう心に思い定める。
部下を育てる、チームを作る、そこでの管理職の役割は、この気付き、改心の機会を部下に提供することにある。その方法は、部下に質問を投げかけて、部下に考えさせることである。
自分の抱えている問題は何か、その問題が示す自分の課題は何か、その課題を解決することの意味は何か、その課題の解決方法は何か、その課題を解決したその先に見えるものは何か。
質問は巧みで適切である必要がある。巧みで適切な質問は、ちょうど池の真ん中に石を投げ込んだときのように、部下の心に波紋を広げてゆく。部下はこれまでとは違った視点で、自分の考え方ややり方を見る。
コーチングとは、つまりは相手に自ら考えさせ、自ら気付かせるための、巧みで適切な質問を投げかける技術である。何を質問するかも大切だが、それ以上にそれをどう問いかけるかが重要である。相手を客観的に見極め、相手が抱えている問題の本質を深く把握するだけではなく、質問をする側である自分、相手と自分との間合いをも、客観的に見る目が必要とされる。
コーチングをしているとき、実はコーチ自身も、自らを見つめ直し、自らにコーチをしているのかもしれない。
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