人・組織で備えたい“トリの目” 〔第3回〕:部下がフィードバックを受け入れる時
本コラムでは、TMW講師陣が、ビジネスにおいてトリの目を持つとは何か、それはどんな意味を持つかなどトリの目に関わる話題を扱ってまいります。
部下がフィードバックを受け入れる時

肩をぽんと叩かれて、「Aを付けておいたからな」、フィードバックといっても、そんな経験しかない、ある課長の述懐である。
人事考課には熱心に取り組むが、その結果を部下に渡す、フィードバックはおざなりに済ませている、そんな管理職がまだ少なくない。 「部下の欠点をあげつらうようで話しにくい」、「部下の人数が多くて、丁寧になどやっていられない」、そういったことが理由だろうが、それで良いのだろうか。
部下は当然、考課の結果だけではなく、何故その評価になったかを知りたがる。何故についての説明がなければ憶測する。評定が良い場合はまだしも、高からざる評価をされた場合、憶測は時として疑心暗鬼を生む。「上司に嫌われているのではないだろうか」、「会社で必要とされていないのではないか」、「自分は駄目なのだろうか」など。
人事考課を行う以上、きちんとしたフィードバックは必要不可欠である。
先ず、評価の結果を納得的に受け止めさせる必要がある。期初に合意した目標をどの程度達成したか、その達成のためにどんな行動を取ったか、それがどのように評価に繋がったか。客観的で公正な評価であると理解できたとき、人はそれがかりに思わしくないものであったとしても、それなりに受け入れると言われている。人事考課制度の枠組みを認知させ、それを制度として運営していくためにも、このプロセスは欠かせない。
そして何より大切なことは、評価の結果を出発点として、成長を促すことである。期中の行動のどこにどんな問題があったのか。克服すべき課題は何か。その課題を解決するために、行動のどの部分をどう変えてゆけばよいのか。そのためには何をすればよいのか。
人事考課の目的は、期中の行動に一定の評価を与えるとともに、その対象者が自らの課題に気付き、その課題を克服して一回り大きく成長するためのきっかけを提供することにもある。いやむしろ、その点にこそ人事考課の本質があるともいえる。成員一人ひとりの成長なくしては、組織の存続はありえないのだから。
フィードバックが、対象者の気付きを促し、次期の取り組みの中で克服するべき課題を明らかにし、変化成長への決意を新たにさせるものであるとすれば、そのプロセスは慎重に組み立てられたものでなくてはならない。どんなふうに説明し、どんな質問を投げかけ、どう考えさせるか。
準備不足のまま始めたフィードバックが、結果として上司の側の独演で終始するということも少なくない。必要なことは、対象者が考え、問題に気付き、課題を見つけ出し、解決策をつくり、それを実行することを決意することであり、上司の役割はそれを支援すること、つまりは産婆役を演じることなのである。
期初における適切な目標の設定と合意、期中の観察とその都度のフィードバック、必要に応じての支援が、もちろん前提になる。部下育成は真剣勝負なのである。
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