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人・組織で備えたい“トリの目” 〔第6回〕:「“本音”を引き出す“真”のコミュニケーション」できていますか?

契約講師/ファシリテーター 樽石 陽子

本コラムでは、TMW講師陣が、ビジネスにおいてトリの目を持つとは何か、それはどんな意味を持つかなどトリの目に関わる話題を扱ってまいります。

「“本音”を引き出す“真”のコミュニケーション」できていますか?

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 時おり研修で、参加者の方を相手にコーチングのデモンストレーションをライブで行う機会がある。するとデモンストレーションを見ておられた方々から「一歩も二歩も深く本音を引き出して分かち合っていくのに驚いた。日頃のコミュニケーションの浅さを感じた」という感想をよくいただく。『本音』とは“たてまえを取り除いた本当の気持ち(広辞苑)”とある。

 確かに、日ごろ私たちは建前を抜きにして本音を語ることに躊躇する場合が多い。上司と部下の関係となれば尚さらだ。本音を言えば自分の立場や評価が悪くなってしまうのではないかという恐れも付きまとう。しかし同時に、本音を言葉にしないまま上司に従おうとするなら“Yes but”という心の綱引きが起こり、自分の力を存分に発揮できないことは、どなたも経験されたことだろう。また最近では、業績や数値など表面的な会話しか行わない企業に比べて、一歩深い心の不安や葛藤を分かち合っている企業では、うつ病の発症率が低いというデータも出ている。上司の立場からしてみれば、部下の本音というある意味厄介なことに触れる前に「イエス」と言って欲しい気持ちもある。しかし貴重な存在を失いかねない可能性を考えると、本音に触れない影響は今の時代とても大きいのかもしれない。

 あるマネージャーの方から、部下の方のキャリアの件でご相談を受けた。「とても優秀な部下なので、次期プロジェクトリーダーを任せたいと話をした。でも彼はどうも乗り気ではないようで、最後に決まって“マネージャーに感謝はしているんです”と言う。そう言われてしまうと、今後どのように会話を進めていいのか分からない」と悩んでおられた。この部下の方の言葉「感謝はしているんです」・・・・少し妙な印象を受けないだろうか?「感謝をしているんです」ではどうだろう。前者は“感謝はしているが、何か言葉にしていない本音が潜んでいる”ように聴こえる。だとすると本音を引き出す次の会話はこうなる。『感謝はしているんだね。けれど何か気がかりなことがあるの?』と。実際にこの部下の方は、小さなお子さんが大病を患うという大きな悩みを抱えていた。同時にプライベートを持ち出すことのキャリアへの影響にも悩み、葛藤をしていたそうだ。その話を聞かれたマネージャーは、それも含めて一緒にキャリアを考えていくことを約束されたそうだ。
 私たちは何か心の内で気になることがあると、自然にシグナルを発信している。言葉や表情、全体のニュアンス。相手の本音を引き出していくには、よく相手を観察し、一言一句の言葉も厳密に聴き取っていくことが鍵となる。そのシグナルを常に見逃さないことだ。

 成果主義が台頭し、自分が不利になるようなことは口にせず、本音を内に秘めて表面的なコミュニケーションを取ることを私たちは強いられてきたかもしれない。組織制度そのものの改革も今後必要とされるだろう。
 けれど、組織を本当の意味で創っているのは制度ではない。組織を動かしているのは、私たちは生身の人間だ。どんな素晴らしい制度の下で働いていても、心を置き去りにすれば必ず歪みが出てしまう。「制度の問題だから」と目を瞑るのではなく、私たち生身の人間ができること・・・・・一歩深い心の内にある本音に触れ、辛さや傷みも分かち合うことによって、本来私たちが持っている創造力をさらに発揮できるのではないだろうか。

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