人・組織で備えたい“トリの目” 〔第7回〕:「裁かない」という姿勢が客観視を促す
本コラムでは、TMW講師陣が、ビジネスにおいてトリの目を持つとは何か、それはどんな意味を持つかなどトリの目に関わる話題を扱ってまいります。
「裁かない」という姿勢が客観視を促す

私たちが提供している『トリの目』のコンセプトは『物事を客観的、また多角的な視点から見る目を育てる』ことにある。特に、部下育成のためのコミュニケーション研修では大きく二点が目的に掲げられている。一点目は、我々リーダーが自分自身を客観的・多角的に振り返り効果的なコミュニケーションが取れているのかを棚卸しすること、そして二点目は、部下に客観的な視点を持って頂くにはどうコミュニケーションを取ればよいかの技術を習得することだ。
私たちリーダーが、日頃の自身のコミュニケーションを振り返る時、必ず上手くいっている点といない点に出会う。例えば「自分が言うべきことははっきり伝えられる、しかし威圧的な印象を相手に与えているようだ」或いは「思いやりのある優しい接し方だが、遠慮があり上司の意図が伝わってこない」など様々だ。上手くいっている点は自分でも受け入れ易い。しかし上手くいっていない点はどうだろう・・・自分の内側で何が起こるか想像してみて頂きたい。「自分は上手くできていないと咎められているのか」「私はダメなのか」そんな気持ちにならないだろうか?…すると続いて「だって相手が何も言わないから言葉が荒くなる」「だって嫌われたくない」…自己保身や言い訳の言葉が、自分の内側から次々とやってくる。自分を客観的に振り返る時、同時に内側に起こる自己批判は、私たちの中に自然に起こりやすい心理パターンである。しかしこの状態は、私たちが冷静かつ客観的に物事の事実や真理を見ていくことの妨げとなることは、皆さんも察しがつくことだろう。
このような時に重要なのは「自分を裁かない」という姿勢だ。上手くいっていない点に出会った時、その行為に「良し悪し」の判断を加えない。ただ「上手くいかせていないかもしれないな」と、ありのままの状態を見つめ、一切の裁きを加えないこと。自分の内側に起こる裁きや判断の声を静めると、“落ち着きと冷静さ”がやってくる。この中立な態度は事実を事実としてまず受け入れることを容易にする。さらに次の段階「では私が欲しい結果からみたら今の私の言動はどうなのか?私のやり方だけが本当に正しいといいきれるのか?」という物事を客観的に見る“明晰さ”に繋がっていく。
この「裁かない」という姿勢の大切さは私自身が実感として学んできたことである。裁かずに自分の状態を振り返り、客観的視点をもたらす質問を自分に投げかける。それは、自分の中に湧き上がる可能性と自然に出会うような体験だ。
この姿勢は、部下を育成指導していく時にも活かされる。私たちは部下の行為を見た時、「主体性がないのは良くない」「発言しないのは悪い」など、良し悪しで判断を加えてしまいがちだ。良し悪しで判断する私たちの姿勢は、部下に「裁かれている」という印象を言葉や雰囲気から伝えてしまう。すると客観的に振り返ってもらうどころか、言い訳や自己保身の言葉を部下から聞くことは、上記からも想像がつくだろう。
大切なのは良し悪しの判断を脇に置き、裁かず、相手に対して温かな眼差しを向けながら、ただありのままの相手の状態をまず受け止める(これはトリの目コーチングのSTEP1に該当する)。そしてお互いがフラットな心の状態で「いま求められている結果から見てどうなのか」(客観視を促すSTEP3)に焦点を当てたコミュニケーションを取る。すると部下も冷静な状態で客観的・多角的に自分を振り返り、効果的な行動を選択していくことができる。
まず、リーダーが「自分自身を裁かず客観的に視る」ことに慣れると、その姿勢が体現化されて部下とのコミュニケーションに活かされる。ぜひ皆さんにも試してみて頂きたい。
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