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人・組織で備えたい“トリの目” 〔第8回〕 : ビジョンの浸透が成果を生み出す

契約講師/ファシリテーター 髙橋義徳

本コラムでは、TMW講師陣が、ビジネスにおいてトリの目を持つとは何か、それはどんな意味を持つかなどトリの目に関わる話題を扱ってまいります。

ビジョンの浸透が成果を生み出す

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   環境変化に適応し業績が堅調に推移している企業は、他と何が違うのでしょうか? 何年か前に、堅調な成長を遂げている会社A社に転職したある人は、職場の雰囲気の違いを話してくれました。その職場は、会社が整えたパソコンネットワークの意味を、従業員が理解し、それぞれが意欲的に活用をしていました。それに比較し、転職前の会社では、最新の技術と現代的なデザインを取り入れた製品が売り物の超一流のメーカーであったにも関わらず、パソコンネットワークはお粗末で、業務に支障をきたすこともしばしばあり、上司に改善を訴えたのですが、なかなかまともに取り合ってくれなかったそうです。

 転職先のA社では、四半期毎に全社員を集め、経営トップ自らがパワーポイントを使い、経営結果の報告を行っているそうです。そして、次の四半期に向けての課題やビジョンについても自らの言葉で語ります。更に次の四半期の具体的な全社目標が発表され、それぞれの部門はそれを受けて部門目標を立てます。この部門目標に対して各個人が目標を立て、立てた目標は全て経営会議での承認を受けてから確定されるそうです。その目標の達成度によって各自の四半期毎の評価が決まり、賞与等に反映するようになっているのです。会社がそこに向かっているのかが明確に示され、そこに対して自分たちがどのように貢献していくかがハッキリと意識できる仕組みになっているのが窺えます。それ以外にも、毎月全社員対象の朝礼があったり、中途入社者に対しては、トップとの懇親会があったりと、ビジョンの浸透がかなり意識された取組みがあるそうです。

 一流と言われる企業トップの言動に報道などで触れると、いずれもしっかりとした現状認識とそれに対するビジョンを持っておられることがわかります。しかし、それがその組織にしっかりと浸透し、結果に結びついているかというと一概にそうとは限りません。 川の上空を飛ぶ「トリの目」からは川岸の様子やその川の流れゆく先が見通せても、川の中で必死に泳いでいる人には、その川の岸で何が起こっていて、流れの先に何があるまで、思いを巡らせることは難しいものなのです。

 同じように、トップと同じ現状認識やビジョンを、組織の中にいる人が腹に落とすことはなかなか難しいものがあります。上位者から「今、私たちの会社を取り巻く環境にどんな変化が起こっているのか。そして、このままいくとどのような将来が待っているのか」という問いがに常に発せられ、「それに対して、そのようにしていきたいか」というビジョンが常に語られなければなりません。 いたずらに不安をあおるだけだと、活気がなくなりますし、夢のようなビジョンだけでは誰も取り合ってくれません。しかし、A社のように組織の中の人たちに対して「トリの目」を喚起する仕組みが機能すれば、健全な問題意識とビジョンが浸透し、成果を産み出すためのエネルギーが発生します。

 冒頭の話をしてくれた方が転職前にいた会社が、現在の環境のもと、経営的に苦戦を強いられているのに対して、転職先のA社が環境の変化にしっかりと対応し、現在の不況下においても堅調な業績を残しているひとつの要因は、「問題意識とビジョンの組織への浸透度合い」にあるのでは、私は考えています。

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