なぜコーチングか
指示するだけでは部下の行動が変わらない訳
我々にはいくつもの「思い込み(考え方のくせ)」がある。経験が重なるほどその思い込みは強化され、やがて本人にはそれが「当たり前」になってくる。例えば「品質」を重視し、高品質の製品をつくるためにさまざまな取り組みを展開しているA社。製造課長はTQM活動が形骸化していることが気になっており、部下に当事者意識を持って、本当に品質とは何かについてチームで考えるようになって欲しいと思っている。事実この半年は収率も横ばい状態が続いている。「品質が大事なんだ」「品質を上げるんだ」と繰り返しいったところで部下は「そんなことはわかっています」というに違いない。部下はこれまでも品質が大事といわれてきたし、TQM活動にも取り組んでいる。昨年は全社で表彰もされた訳だから「自分が問題だ」とは思えないのである。
「このままではいけないんだ」「課長のいっているのは、こういうことだったのか」と部下に思わせるにはどうしたらよいか。
部下の思い込みを打ち破る
まず求められるのは「品質を高める」とはどういうことなのか、リーダー自身が具体的に噛み砕いて言葉にすることだ。そのためには、リーダー自身が品質向上とは何かについて人に説明できること、そして展開アイデア(仮説)と信念を持っていることが前提となる。
その上で、部下の「私はやっています」という思い込みに対して、問いかけを行いその思い込みを打ち破るのである。思い込みを打ち破るには『このままいくとどうなるか』ということをあらゆる角度から考えさせることである。まずは「このままいくと目的に到達するのか」問いかける。上司から見れば「問題」なのだから、なぜ目的に到達しないのか、事実や考えを示しながら意見を問うてみるのである。そして「今のままでいると周囲にどんな影響があるか」本人が及ぼす周囲への影響に思い至らせることである。なぜならば、人はその個人の経験の中で「正しい」と思う行動を取っているのであり、人から見ればそれはまた違った印象や影響を受けているのである。その事実に思い至らせることが肝要だ。
このような考え方から、部下に質問を繰り出していく必要があるが、これは根気のいる仕事である。人間自分に気づくことが一番難しい。管理職にコーチング研修をしていると、部下に気づかせるというステップが苦手な人が多い。管理職側にこうした対話を行うための、部下の認知プロセスを分析する論理性が不足している可能性が高い。できるだけ早く、こうした技術を管理職が習得し、日々の業務で実践していくことが求められる。研修参加者の中にまれにとてもうまく「気づかせる質問」ができる人がいる。こうした人の質問の出し方を参加者間で共有し、その技を展開していくことが会社全体のスキルアップの早道ではないかと考えている。
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