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組織の活力を高めるには

株式会社トッパンマインドウェルネス 常務取締役 岩崎玲子

組織活力向上のプロセス

 トッパンマインドウェルネスでは顧客企業の組織風土を診断する『仕事と職場のチェックリスト』という調査を行っている。過去2年間に収集された4社4000名のデータを分析し、われわれは組織活力を高めるためのプロセスを明らかにし た。その結果を『組織活力向上モデルの開発と活力向上施策の方向性』として2005年11月日本経営行動科学学会で発表をおこなった。*1

*1 組織活力向上プロセスモデルの開発及び日本経営行動科学学会発表は東京国際大学 角山剛教授の監修を受けて実施したものです。

 分析結果によると、活力向上のスタートラインは組織構成員の『自分のコミュニケーション力』への自信の高さであった。コミュニケーション力に自信があるほど、「問題解決力」や「戦略実現力」といった企業人に求められる『自己開発力』が高くなることが分かった。『自己開発力』が高くなると、仕事に対する「達成動機」「目標へのコミットメント」「自ら変革に挑戦する意欲」「やりがい」といった『仕事に対する動機』が高まることも分かった。仕事に対する動機が高まれば、仕事や職場との相互作用も高くなり、その結果『組織に対する見方』が肯定的になっていた。『組織に対する見方』とは「ビジョンの共有度合い」「組織の戦略性」「チームワーク」「上司への信頼性」「制度への納得感」といった項目である。組織への見方は、「仕事への満足感」「熱意」「組織や仕事への愛着」といったものを合わせた『組織活力』と密接に関係している。そして、『組織活力』が高くなると、『仕事への動機』がさらに高まるという循環に結びついていたのである。

組織活力向上における管理職の役割

 われわれは上記4000名の一部の組織で管理者に対して180度調査を実施していたため、部下からの評価でみた上司のコミュニケーション力とその部下の自信の強さについて検討を試みた。その結果、部下によるコミュニケーション力評価上位30%と下位30%の管理職を抽出し、それぞれの部下の自己開発力を比較すると5%水準で優位差があることがわかった。つまり、管理職のコミュニケーション力が高いと部下の自己開発力への自信が高くなることが分かったのだ。部下が「自分は問題解決ができる」「戦略的に考えられる」と自信を持つには、管理職が部下とコミュニケーションし、育てていると部下が感じているかどうかが影響しているというわけだ。このことは、米国の心理学者エドワード・デシの内発的動機付けの原理にかなっている。すなわち、上司が部下に仕事のやり方、目的を話し、熱心に指導すれば、部下は「上司は自分を見ていてくれる」「自分を受け入れてくれている」という受容感、信頼感を高めていく。そして、上司と対話をすることで仕事への関心が高まり、その仕事を自分でやってみて、それができたときに「できた」ということが上司によってフィードバックされれば、「できるんだ」という自己効力感に結びついていく。できなかったときに、上司が一緒に考えたり、間違いについて指導したりすれば、それが学びになり失敗しても興味は薄れず、学習することができるため、次の挑戦につながるのである。そのとき、鍵になるのは「自律性」であるというのはデシをはじめ多くの心理学者が指摘することである。つまり、自分で決めてやってみるような働きかけが動機付けには重要なのだ。いくら自信があっても、すべて強制されてやらされていたら、興味を持って自分から動こうという動機にはつながらない。スキルが低い部下であれば、自分で選べるように選択肢を提供する、スキルがある部下であれば、やり方をすべて任せるなどして「自分で決定した」という感覚が持てるようにサポートすることだ。デシはその著書『Why we do what we do』( 日本語訳『人を伸ばす力』(新曜社))の中で取り入れ(introjection)と統合(integration)という概念を紹介している。取り入れとは「ルールを噛み砕かずに丸ごと飲み込むこと」であり、統合とは「ルールをよく噛んで「消化」することだと紹介している(同書p127)。これはわれわれが言うところの「腹に落とす」プロセスであると考える。部下が「なぜこれをするのか」自分のこととして理解すれば、いやいや、あるいは訳も分からずにやるのではなく、自分のこととして仕事に向き合うことができ、それはやがて自ら考えて行動してゆく内発的動機につながってゆくのである。

 われわれの組織活力向上プロセスモデルは、その入り口として管理者または周囲のリーダー、仲間のそうした働きかけの重要性を反映した結果であると考えている。管理職のコーチングスキルはその組織の活力にとってきわめて大きなファクターであるといえるだろう。

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