部下を育てる
「自分の将来がどうなるか」これは多くの人にとって関心事である。文化放送ャリアパートナーズによる「就職活動調査」によると、大学生が企業選択時に最も重視するのは「キャリアを高める企業か」という点であった。当社のリサーチでは、新入社員は入社半年程たつと、モチベーションが下がることが分かっている。期待一杯で入社したが、現実は厳しかったという「リアリティショック」であり、学ぶ場が無いことへの失望が見え隠れする。
また、ニッセイ基礎研究所によるホワイトカラーの転職動向調査でも、労働条件や福利厚生面への不満よりも「能力や適性、専門性を活かした仕事がしたかった(38.4%)」「専門性の向上やキャリア形成につながる仕事がしたかった(32.9%)」という理由の割合が高かった。働く人々の多くは、自らの能力や適性をフルに活かして成長したい、キャリアアップしたいと望んでいるのである。ここで最も重要な役割を担っているのは、組織の中で「上司」と呼ばれる人々である。何故なら、部下が求めているのは意味のある、やりがいのある仕事、自己の成長につながる挑戦の機会、組織に貢献しているという実感であり、それをコントロールできるのが他ならぬ上司だからだ。部下を育てる優れた上司とは、部下の成長に心を配っている上司であるといえよう。部下が成長するためには、MBAといった勉強で得られる知識の習得支援だけでなく、何よりも日常業務の中に成長機会があることが重要だ。
あなたは普段、次のようなことを部下にしているだろうか?
【Check List】1) 関連業務を組み合わせ、ある程度まとまった業務を任せる。 2) チームを編成し、一定の裁量権を与えて業務を遂行させる。 3) 部下に顧客と接触する機会を与える。 4) ローテーションを組み、新たなスキルを習得させる。 5) 重要な意思決定に部下を参加させる。
今回は、部下を育てるマネジメントスキルについて解説する。
1.やってみて、やらせてみて、フィードバックする若年の部下ほど日常業務において「説明する」⇒「手本を見せる」⇒「やらせてみる」⇒「結果をフィードバックする」というプロセスが重要となり、このプロセスを通じて部下は仕事について学んでいく。学ぶ課程で上司が見本(ロールモデル)になることは有効だ。客対応に同席してやり方を見る、機械の操作方法を見るという場で、部下は多くのことを学ぶ。目でみたら一部分をやってみる。できなければフィードバックを受けて、自分の考えていたやり方(解釈)を修正して、またやってみる。うまくいった時に「できた」というフィードバックを受ければ、「自分はできる」「成長している」という感覚(有能感)が生まれてくるのである。
2.一緒に考える業務遂行中は、考えなければならない場面も多い。新しいアイデアは早々生まれないが、誰かと考えることで好奇心が高まり、より深く理解し、新たな視点を発見し問題解決が促進されることが報告されている。考えに行き詰まった部下が相談にきた場合には「本当にそうか」「他の考えはないか」といった視点を変える質問をすることで、部下の考えを促進することができる。こうしたやりとりの中で、部下の問題解決能力が高まるだけでなく、実際にアイデアが生まれるなどの効果も期待される。
3.適切な目標を与える部下が適切なチャレンジレベルの目標を持つこともポイントだ。目標は高すぎても低すぎてもやる気を失う。適度にやりがいがあって、成長の余地がある課題が与えられれば、意欲や成果につながる可能性が高いことが指摘されている。また、目標に対して部下がどれだけ納得し受け入れているかも部下のやる気に重要な影響を与える。上司が一方的に目標を与えるよりも、目標設定に部下を参加させたり、目標の意味や必要性、部下の役割をきちんと説明した時の方が部下のやる気が増すことが実証されている。
4.経験談を語る自分と似た場面に直面している部下に説明する際には、自分の経験談を語ることも有効だ。体験から得た教訓、うまくいったときの具体的な秘訣(人なのか、情報なのか等)、特に失敗談は部下に上司の人間的な親しみを感じさせ、得る効果は大きい。ただし押し付けや説教、自慢話にならないよう、伝えたいメッセージを明確にして伝えるべきときに話すことがコツである。そうすることであなたに対する部下の信頼感がいっそう高まるだろう。
このように、上司は部下の関心事やスキルを把握し、時に部下の成長という視点を持って部下を支援することが有効である。部下が育てば組織の生産性の向上や業績につながり、結局は上司自身にも恩恵があるのだから。
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