本当の「やる気」はどこから生まれるのか?(Part.2)
内発的動機づけの発現プロセスとそれを高める方法

前回は、「内発的動機づけ」(難しい仕事を成し遂げた、責任ある仕事を任されている、仕事を通じて成長しているという満足感による動機づけ)と、「外発的動機づけ」(報酬、ポストなどによる動機づけ)という2つのタイプのやる気についてご紹介した。
外的な報酬のために活動している時よりも、達成感や成長感などに支えられて活動している時の方が多くの努力や創意工夫を生み出し、質・量ともにハイレベルの成果を継続的に上げることが一貫して実証されている。長期的な視点からみると、部下のやる気を引き出すには内発的な動機づけの方が はるかに有効である。
それでは、内発的な動機づけはどのようにして生じるのであろうか?
図1は、教育場面において生徒の自ら学ぶ意欲が発現するプロセスを表すモデルである※1
※1:桜井茂男
「学習意欲の心理学 自ら学ぶ子どもを育てる」 誠信書房より
まず、内発的な動機づけを支えているものがある。それは、「自己決定感」「有能感」「他者受容感」という3つの要素だ。自己決定感とは「自分のことは自分で決めている」という気持ちであり、有能感とは「自分なら頑張ればできる」という本人の気持ちである。他者受容感とは「自分は周りの大切な人から受容されている」という気持ちである。この3つの要素が自ら学ぶ意欲をもたらし、楽しさや満足感が生まれる。今回は、この3つの要素を仕事場面に置き換えて考え、部下の「自己決定感」「有能感」「他者受容感」を高める方法について考えてみよう。
(1)自己決定感人間は本来、自分が外的な力によって操られる「コマ」のような存在ではなく、自分自身の行為の「源泉」でありたいという欲求を持っている。言われたことだけ、決められたようにやる仕事ほどつまらなく、やりがいも感じられないだろう。「言われたことをやっている」と思っている人と「任されてやっている」と思っている人とでは、仕事に対する興味や意欲の差は歴然である。組織の一員である以上、何から何まで決めさせることは不可能であるが、できる限り裁量権や選択の機会を提供することで部下の自己決定感を高めることができる。目標設定や意思決定に部下を参加させる、重要な会議に出席してもらうといったことも考えられるだろう。そうすることで、「自分の仕事である」という意識が部下に生まれ、納得して活動に取り組むことができる。ただここで注意したいのは、「任せる」と「ほったらかす」のは違うということだ。達成すべき目標を明確にし、部下が立てた計画を検討し、計画の実現を支援するのが上司の重要な任務である。部下が主体性を持って意欲的に取り組むには、上司のサポートが不可欠なのである。
(2)有能感高い困難な目標は、低い容易な目標よりも動機づけを高め、創造性やよい成果を生み出すことがこれまでにいろいろな実験で確かめられている。但し、部下がその目標は「がんばれば達成できる」という感覚を持っていることが必須条件である。とうていできそうもないと思っていることに努力を注ぐ人はいないだろう。その分の労力は、できないことへの言い訳に費やされることとなる。そのような場合には、中間目標をいくつか設定し、段階的に目標達成することが有効だ。最終目標だけを与えた場合よりも、中間目標も同時に与えた場合の方が成果が上がることが、多くの研究で示されている。 有能感は、頑張ればできそうな最適なチャレンジレベルの目標を自分の努力によって達成した時に、もっとも感じることができる。逆に失敗した時でも、その原因と改善策を部下がきちんと理解できれば、「次はできる」という気持ちになり有能感が低まることはないだろう。ここで重要なのは、上司の適切なフィードバックである。部下のどこが良くてどこが悪かったのか、あるいは何ができていて何ができていないか、客観的なフィードバックをまめに与えることで、部下が自信過剰や無力感に陥るのを防ぐことができるのである。
(3)他者受容感内発的動機づけの研究では世界で第一人者のデシ博士は、自律的でありながらも、同時に自らを信頼し支援してくれる人物の重要性を指摘している。特に経験やキャリアの浅い部下が自己決定感や有能感を得るためには、上司の働きかけが不可欠である。デシ博士がゼロックス社で行った研究では、部下に選択権を与え決定への参加を支援する管理職の元で働く従業員は、会社をより信頼し、給与や福利厚生のことにとらわれずに、より高いレベルの動機づけと満足を示していた。さらに、部下に選択権を与え決定への参加を支援する方法を管理職に訓練すると、その部下たちがより優れた成果をあげることを確かめたのである。部下との信頼感を醸成するにはまず、部下を受容し、十分に話し合い、勇気づけや励ましを与えることである。また、上司は自分の成長を気遣い、いざという時には助けになる存在であるという認識を部下が持つことが必要だ。こうすることで部下の内発的な動機づけが高まり、目標への積極的な取り組みが生まれるのである。
<参考文献>
「人を伸ばす力―内発と自律のすすめ」 エドワード・デシ、リチャード・フラスト(著) 桜井茂男(訳) 新曜者
「学習意欲の心理学―自ら学ぶ子どもを育てる」 桜井茂男(著) 誠信書
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