TMW UP FRONT

俯瞰的な視点とぶれない基軸をつくる

常務取締役 岩崎 玲子

 昨年、日経ビジネスオンラインに連載された大上二三雄氏の経営戦略立案に関するコラムに基づき、当社はある企業の次期役員クラスに向けた研修を実施した。

 この研修はISL(インスティテュート・オブ・ストラテジック・リーダーシップ)のゼミ・ファカルティや東大EMP(エグゼクティブ・マネジメント・プログラム)のアドバイザーを努める同氏が、そのマネジメント教育の経験や視点を取り入れて企業向けに構築・運営したものだ。

  

 プログラムはまず、経済、政治、社会などあらゆる領域の50年先を概観していく。不確実な時代性と自らの短期思考を痛感する瞬間だ。その上で、自社に今後最も大きく影響を及ぼす動きは何かを2つ特定し、その2軸をマトリクス化して4つのシナリオを作成する。そのいずれかがきたときに自社の保有能力は適応可能かを評価する。両方の波がともにきたときには対応できないことが多い。

 そのうえで、自社が取り組むべき優先課題を4つ選択し、グループに分かれて大枠の取り組みを描く。次に、各自が自部門の中期計画に落とし込んでいく。

 もちろんISLでは1年、東大EMPでは半年、週末を使い各界の第一人者と対話を重ねて行くことと比べれば、このわずか6日間のプログラムには、広い視野や深い内省という面では限界がある。それでも、参加者は自分の担当領域から離れ、全社視点や長期の時間軸に基づいた思考に挑戦したことで、視野の狭さや時間軸の短さを痛感したようだ。

 不確実な時代、対応するには世界で何が起こっているのか「現実」を自分達なりに実感して理解しなければならない。そのためには、幅広く情報を集め、持ち寄って、自分達の見方を再構成することが大切だ。しかし、「幅広い情報収集」と「見方の再構成」を本当に行うのは、簡単そうで実は極めて難しいことである。大上講師によれば、“誰もが口にする日本の経済に関する問題を外国人と30分語ってみればすぐに判ること”であり、そうした時代に経営者として意思決定をするには、ぶれない軸が求められるという。軸を持つためには物事のそのため本質を探究し、自らの内省も求められる。 そこで、講師の知識、経験、情報を提供し、気づきや理解を加速するということなのだが、そうした時間と場を企業がどこまで提供するかは議論が分かれるかもしれない。しかし、自分達の仕事の進め方や自身のあり方を見直すために、研修という場を提供したいというニーズがあることは確かである。

 そのような背景から、当社は今年も幹部向けの研修は何を提供できるのか、試行錯誤を続けている。

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