管理職の対話能力がカギ
職場になじめず会社を去る若い人たちが増えている。産業医や相談室を置くなど企業側も努力をしているが、絶対的な効果はあがっていない。ストレスに強い個人と組織をつくるためにはどうしたらいいのか。職場で今、研究と試行を続けている。
職場で受けるストレスに一番、影響のあるものは何か。それは働きがいや満足度といった「やる気」といわれるものだ。「やる気」が強ければストレスは感じにくく、希薄であれば容易に影響を受けてしまう。その程度を分けるものは、①仕事の内容をどう見ているか②サポート態勢がどうあるのかという意味での人間関係、が挙げられる。
また、ストレスが多い職場ではたいてい、社員同士の対話がうまくいっていない。「仕事のやり方をうまく学べない部下と、仕事の目的をうまく伝えられない上司」がたくさんいるのだ。「やる気」を損なわないためには、コミュニケーションの質を高めることが必要だ。
ここで特に重要なのは、管理職の対話能力だろう。部下に話しかける時には何を言うかよりも、どう言うかが肝心なのだが、仕事の責任と時間に追われながらこれを意識し続けることは難しい。「君にはこうしてもらいたい、こうなってもらいたい」ということを、きちんと伝える手法があれば、状況は変わる。 そこで私たちが提案しているのは、効果的な対話手法を身につけていく「コーチング」だ。部下との関係を良好に保ちながら成果をあげる管理職の行動をモデル化したもので、実用性が高い。米国で開発されたものだが、昨年夏から、関連企業内で課長層を対象に研修を実施している。
効果的な対話手法を知ってもらうことで、これまでの部下への接し方を点検してもらっている。「自分のやり方には問題がない」という認識から抜け出してもらうことが最初の狙いだ。
職場のストレス問題では、企業内でメンタルヘルス(心の健康)対策を確立することも一つの方策だ。実際、私たちもカウンセリングについて研究した。その結果、これらの取り組みは効果が見えにくく、受ける側の否定的な受け止め方を払拭しにくいなどの難しい点も明らかになった。
また、様々な企業から相談を受けていると、企業戦略の浸透具合が問題であったり、準備不足で成果主義を導入して現場が混乱したりするケースなどもあり、必ずしもメンタルヘルスだけの問題ではなかった。
こうしたプロセスを経て、企業側ができることは疾病対策だけではないのではと考えるようになり、「やる気の向上」に焦点を当てて研究している。管理職の方に対話能力を磨いてもらい、カウンセリングの機能も担ってもらうのだ。
せっかく仲間になった社員の「やる気喪失」や離職をくい止めるには、社員自身を成長させ、それを実感させることだ。何が問題なのか、自分たちは正しい方向に向かっているのか。思考し、気づくためには対話の相手が必要だ。カギを握るのは、身近な管理職だ。
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