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生産性向上に向けて〜メンタルヘルスからモチベーションの向上〜

北海道生産性本部 メンタルヘルス研究会ジャーナル「心のゆとり第12号」掲載
岩崎 玲子 (常務取締役)

(株)トッパンマインドウェルネスは個人と組織の心の健康と成長を目的に、凸版印刷の100%出資により平成14年4月15日設立されました。

 当社のサービスを貫く基本は「物事の見方、考え方(認知)」の偏りやくせを知り、事実を事実としてとらえること、とらえた事実(問題)をどう解決するかという「問題解決プロセス」の教育にあります。その背景には、企業における従業員支援においては、メンタル不全を起こしてからの対応ではなく、そうならないように個人と組織の力を高め、生産性向上に寄与することが基本であるとの考えがあります。メンタルの領域は疾病の判断が難しく、グレーゾーンが存在するという特性があります。従って、不具合を感知してからの対応は基本的には医師の領域であると位置づけました。

 しかしながら、昨年1年間、様々な企業の人事担当者の話を伺ううちに、アプローチの変更を検討するようになりました。その理由のひとつは、「メンタルの問題で休職する者が増えている。カウンセリングを検討したい」というお話が大変多かったことです。要望されるカウンセリングは「病気に早く対処するためのもの」でした。ご担当者自身の「メンタルヘルス対策」はすなわち、疾病領域への対策に限定されているようでした。社会的にも多くの企業人の認識はメンタルヘルスは「企業人に求められる能力開発」ではなく「特殊な領域」に位置づけられているようです。そうした中で相談や研修を導入しても、結局は利用されないままに終わってしまいます。

 そのたびに当社は自問自答を繰り返しました。人事部門のミッションとは何であろうか。企業の成長、存続のために人的資源のパフォーマンスを最大化することではないのだろうか。そのために、人事部門が提供するメンタル面のサポートは「疾病対処」のみであろうか。リスク管理としては必要な要素であるが、パフォーマンスの最大化というミッションに対しては、そのひとつに過ぎないのではないだろうか。

事実、「メンタル不全が増えているので対処したい」というお話を伺っていても、トップのビジョンが不明確であり、それをブレークダウンする中間管理職が迷っているケース。また管理職教育もままならず、部下管理そのものに課題を抱えているケース、さらには急成長により人事制度が未整備のまま成果主義だけが導入され、現場の長に多大な負荷がかかっていると思われるケースなど「メンタル不全対処」以前に対応すべき側面があるような話も多く聞かれました。そうしたケースには「対処療法としての研修、相談」を入れてもメンタル不全の量産装置を備えたままでは効果は薄いように感じられました。

 そうした話を聞くにつけ我々の当初の考え、すなわち個人がメンタルをしっかり維持する能力を付ける、個人を前向きに活かせる組織を作るという能力開発の考えは間違っていないという実感を持ちました。それを裏付けるかのように顧客の口からは「社員のやる気を高めたい」「能力のある社員が辞めてしまう」「部下の考えがわかならない」といった意見を頻繁に聞きました。

 そこで、我々は今年5月、事業目標を「メンタルヘルス向上」から「モチベーション向上」に切り替えました。基本的な理論基盤やサービス体系は変えていませんが、教育研修サービスを明確に打ち出すことで、真にメンタル不全予防領域をカバーし、かつ企業のミッションである生産性向上に寄与するステップを明確にしました。

 当初どおり、「事実を事実としてとらえ、様々な視点から考えて問題解決する」能力開発と、そのために上司部下を基本としたコーチングスキルを強化し、組織内にコーチングリーダーを置くことにより、職場にコーチング風土を根付かせようという考えです。真に企業内で個人が能力を発揮するためには、現場で対話がなされることが原則だと確信しています。このことにより、個人と組織の活力を上げ、生産性向上への実質的な貢献を果たしていきたいと考えています。

〔北海道生産性本部 メンタルヘルス研究会ジャーナル「心のゆとり第12号」掲載〕

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