お客様インタビュー ・ 第5回
新日本有限責任監査法人 様
システム思考を使い、新たな時代に向けた役割認識を促す
【今回のお客様】
新日本有限責任監査法人 様
人材開発本部 人材育成部 の皆様
アシスタントディレクター
福原 俊博 様
スーパーバイジングアソシエート
高須 邦臣 様
インタビュアー:
株式会社トッパンマインドウェルネス 岩崎玲子
人材育成の方針
岩崎:
最初に貴法人全体としての人材育成の方針についてお聞かせ下さい。
福原:
当法人はアーンスト・アンド・ヤングのメンバーファームとして、EYUというフレームワークのもと、実務経験、ラーニング(研修)、コーチングという3つの軸で人材育成を行っています。これらの3つの軸を適切に組み合わせることで、職員1人1人のその時のキャリアの段階において、適切なキャリアプランを含めた成長機会を提供しています。
EYUイメージ図
岩崎:
3つの軸の関係はどのような位置づけになっているのですか?
福原:
前提として実務能力を高めるということがあります。このために、職員が学びたいと思っていること、法人が学んだり、経験した方が良いと考えること、などの話し合いの場としてコーチングを活用してのカウンセリングがあります。そして、カウンセリングでの話し合いに基づいて、職員は実務経験すなわちOJTを積んでもらうと共に、Off-JTである研修でも学んでもらうという位置づけです。
今回の取り組みについて
岩崎:
今回の取り組みについてお伺いします。貴法人はCBS(Core Business Service)と呼ばれる、本部(間接部門)職員および部門(直接部門)のサポート業務を担当する職員を対象とした研修を実施されたのですが、その背景についてお聞かせ下さい。
福原:
当法人はここ数年で急激に職員数が増加しました。そのなかで、CBS職員が組織の中で自分の役割を認識し、その役割を果たす仕組みやそのための教育・研修の整備が充分ではありませんでした。自分に求められていることは何で、自分は何をすればいいのか、それによって自分がどう成長していくのか、という職員の疑問に答える制度が、組織の拡張についていっていなかったと思います。
岩崎:
CBS職員の方の研修はどの様にされていますか?
高須:
まず新人に対しては入所のタイミングで新人研修を実施しています。アソシエート向けの研修は現在企画中ですので、現状シニアアソシエート(SA)に昇格するまでは研修がありません。今回、御社にお願いしたのが、SAとその上位のスーパーバイジングアソシエート(SVA)です。管理職以上は会計士の昇格時研修と合同で実施していますが、この辺りも来年度以降の検討課題です。
プログラムができるまで
高 須 様
岩崎:
今回実施したのはSVA研修ですね。
高須:
実は、今回の取り組みに先立って各部門の管理職にSVA層に何を学んでもらう必要があるのかということについてヒアリングを行いました。そこで出てきた意見としては、「1プレイヤーを脱していない」、「後輩を育成するという意識に欠ける」ということがありました。その原因を考えると、個別のスキル向上には関心がある一方、組織内でのSVAが果たすべき役割が認識されていないのではというところに至りました。従ってSVAには何かスキルを教える研修を行うよりも、研修の場で自分を振り返り、自分の役割や組織内での立ち位置を認識してもらうことにフォーカスした方が良いのではと思い、システム思考を実施するに至りました。
岩崎:
弊社の無料体験セミナーに一度いらしていただいたときは、業務改善の手法ということで話を伺っていましたが、色々お話をお伺いしていった結果、最終的に認識面の話へと変化していきましたね。
高須:
こちらのニーズを汲み取って、提案に結びつけてくれた御社の提案力の結果だと思います。他のベンダー様とのお付き合いもありますが、「貴法人のためにカスタマイズしますよ」とは言うものの、結果的に自分たちの主張を押し付けてくるベンダーが多いなか、こちらの思いに真摯に向き合っていただき、良い研修を作っていこうという御社の姿勢に共感しました。
岩崎:
最初はファシリテーションの要素も盛り込んで、トライアル的に実施しましたね。システム思考のあとにファシリテーションを3ケースほど行いましたが、話し合いの結果、ファシリテーションをプログラムから外すということになり、システム思考一本に絞りました。そこで話し合いの結果、その他の要素は取り除くことにしました。
福原:
トライアル後に受講者にヒアリングしてみたのですが、やはりファシリテーションは使う機会がないという思いが拭いきれない受講者が多かった。その結果から、テーマ設定を、意識を変えたり、視座を上げたりすることに絞り、システム思考一本でやってみようと考えたのが良かったと思います。
岩崎:
あそこは重要な転換点でした。実を申し上げると、話し合いの時は、私はまだ「そんなはずはない。受講者はそうは言うもののファシリテーションを使う機会はあるに違いない」という思いが拭いきれなかったのですが、話をお伺いして、貴法人のことを良く知るにつけ、業務特性上、想像以上に個人単位で仕事をすることが多いのだということが分かりました。
システム思考による役割認識の促進 プログラム内容
ループ図イメージ
今回の研修では、役割認識の転換を図るために、自分達の抱える問題がなぜ起こっているか、それが続くとどうなるかをループ図で描くことから始めました。目前の状況をより俯瞰して見ることで視座を上げ、自分達自身が持つメンタルモデル(暗黙の仮定、無意識にもつ前提)に気づくことを目指しました。
皆様から提示された問題には、「もっと上司の補佐をする」「業務の幅を広げる」「業務効率を高めることへの貢献」などが出されました。ループを描いた後に、このループを回している自分達の「ものの見方、考え方」を上げてもらったところ、
・自分と上司だけにフォーカスがあたり、「部下」にはフォーカスがあたらない。
・自分からアクションを起こしていない。
・業績悪化は他部門のせい。
・上司は助けてくれない、自分がやらなければならないという思い込み。
など他にもたくさんの思考のパターンが出されました。
その上で、この考え方を「もし、誰もアクションをとめていないとすると?」など仮説を立てて考えた場合、どんな可能性が生まれるかを話し合いました。できることをアクションプランとして持ち帰っていただきました。
研修後のアンケートを見ると、
・現在の自分の考え、立ち位置が認識できた。
・自分の行動を止めているのは自分とか、上司を助けることも大切だと気づいた。
・個人と組織の関係を改めて考え、自分の成長だけでなく、レベルアップするためにチーム全体、
特に部下の教育が大切だと思った。
などの感想が上がりました。
システム思考研修を実施して
岩崎:
SVAの皆様に実施したシステム思考を活用し役割認識を高める研修についてお伺いします。実施してみてのご感想はいかがですか?
高須:
役割認識を変えるという目的で研修を行うことは決まっていましたが、その目的をどの様に達成するかという点で悩んでいました。システム思考については御社からご提案を頂戴する以前から知っておりましたし、恐らくこのプログラムが良いのではと思っていましたが、果たしてこの手法でいいのか自信がありませんでした。多くの職員を2日間業務から引き離して研修に参加させるわけですから、意義のある研修にしなくてはなりません。その点で実際に何が受講者に残りうるのか確信が持てなかったのです。もっと無難なプログラムを実施したほうが良いのではと思う一方、それでは目的を充分に達成できないといった葛藤がありました。
それでも最終的にシステム思考でいこうと考えたのは、御社との今までのお付き合いのなかで、当法人のニーズを汲み取って組み立てていただけるというのは分かっていましたので、ここは一つ大船に乗った気持ちで実施してみようと決断しました。
岩崎:
実際に実施してみていかがでしたか?
高須:
非常に良かったと思います。認識に大きな変化がありました。受講者の立場に立つと、ロジカルシンキングすら充分には理解していないであろう人達が、ループ図を描くことによって、問題を表面的に捉えるのではなく、問題の裏にある構造そのものを捉え、自分もその問題の構造の一部であることに気付いてもらえたような気がします。常日頃から自分の仕事の川上と川下を意識するように伝えているのですが、そのことをより構造的に体験できた点が、認識を変えることに繋がったのではと思います。
岩崎:
お二人の勇気あるご決断でしたね。福原さんはいかがですか?
福 原 様
福原:
当初の目的は達成できていると思います。ループ図を書くことによって受講者の気付きが促され、視座が上がったような気がします。自分の周囲の関係者へ意識が向き、自分と周囲との関係を見直すきっかけになったと思います。
研修中もSVAの役割を繰り返し伝えていただいたこと、身近な関係者だけでなく 上司や部下そして他部門を巻き込むことへの意識を喚起していただいたこと、の二つが相まって自分の意識を変えることへの納得感があったのではと思います。
岩崎:
研修中は役割認識や周囲の人々への意識については、かなり意識してフィードバックしていました。受講者自らわき上がるものの他に、逆にご自身が見えていない「上司の立場からするとこう思う」というフィードバックを行ったのですが、「上司ってそうなのだな」という気付きがあったように思います。
福原:
そうですね。受講者に足りない視点をループのなかで発見して、フィードバックで補っていただいている。 「こんな人も自分の仕事に関係しているのか」「上司がこんな風に考えているなら、自分はこうすれば上手くいくのではないか」というように気づかせてくれている。 受講者は管理職に近い視点を持ち始めているように感じました。
高須:
講師の方には、当法人の状況やSVAの5つの役割をよく理解していただいて、講師から繰り返し話していただきましたね。ワークが終わるたびにワークの中身と5つの役割の中の要素を結びつけてフィードバックしていただいたのは非常に良かったと思います。
岩崎:
業界の競争環境の変化の中、職員の成長を様々な仕組みでサポートする考えのもと、CBS職員の皆様に新たな気付きと役割認識の変化を促したい。人材育成部の皆様の強い思いを感じ取ることができました。「システム思考による新たな気付きが、新たな時代のCBS職員の役割認識を促進」が今回の取組のテーマといえるのではないでしょうか。本日はどうもありがとうございました。





