お客様インタビュー ・ 第7回
ネットワンシステムズ株式会社 様
仕事を通じて信頼関係を育み、人と組織の成長を目指す
【今回のお客様】
ネットワンシステムズ株式会社 様
人財開発部の皆様
部長 山田浩二 様
課長 赤澤哲也 様
碓田顕 様
インタビュアー:
株式会社トッパンマインドウェルネス 岩崎玲子
人財育成の方針と背景
岩崎:
本日はどうぞよろしくお願い致します。最初に御社の人財育成の方針について、お聞かせください。
山田:
今年度の人財育成方針は、3つあります。
1つ目は「マネジメント力強化」です。ピープルマネジメントを強化して、組織を強くしていくための育成を行っています。
2つ目は「技術力強化」です。今後のICT業界において当社が注力していく技術分野、従来のネットワーク領域に加え新たな付加価値を提供していくことができる人財の育成を進めています。これには技術者の資格取得推進も含めて考えています。
3つ目は次世代人財育成です。将来の事業経営を担うことができる次世代・次々世代の人財育成に今年度から本格的に着手しています。
岩崎:
その3つの方針が出てくるまでの背景を教えて頂けますか。
山田:
各企業様同様に当社でも、人財の育成は企業経営において欠かせないものであり、最重要項目と言ってもいいかもしれません。しかし、そのやり方としては、「部下や若手は、自分の背中を見て育ってくれているはず」という意識が、無意識のうちにあったのかなと思います。確かに上司や先輩の仕事のやり方を見る、まねることで習得するノウハウは多々あると思います。しかし、そのような「わかってくれるだろう・伝わっているだろう」という考え方だけではなく、市場の変化やお客様のニーズにスピーディーに対応し、より満足度向上を図っていくためには、当社人財の育成も、もっと計画的にプロアクティブに進めていかないといけない。そうした状況の中、2005年頃から人財育成施策の体系化に着手したという経緯があります。
山 田 様
また、当時の人事制度刷新を受けて2009年にキャリア定義書を作成しました。キャリア定義書には、新入社員から経営層までの6階層のグレードと職種に紐付くキャリアコースを踏まえた人財像、会社からの期待役割、それを達成していくうえでのコンピテンシーを示しています。キャリア定義書で会社が期待する人財像を定義し、それを支援していく研修や育成体制の整備を行い、人事制度や報酬体系ともリンクしています。
冒頭で申し上げた3つの方針は中期事業計画(向こう3年間の事業計画)にのっとっておりますが、ベースにはこうした背景があります。
岩崎:
2005年から制度を作ってきて、2009年にキャリア定義書ができ、今それに沿って研修を行っているということですね。
赤澤さんは、キャリア定義書作成に参画されたということですが、どのように進められたのですか?
赤澤:
私を含めて2名で、社内の全部署の意見を吸い上げるところからスタートしました。具体的には、まず執行役員から選任された本部長・部長クラスへのヒアリングを行い、彼らをメンバーとするワーキンググループを発足させてキャリア定義書を作っていきました。ただ、全社共通の定義書を作るとなると定義された内容がどうしても抽象的になり、使い辛くなってしまいます。そこで、社内の全部長課長に部門ごとに集まってもらい、出来あがった定義内容を元に、「ここの定義はうちの部門ではこういうことだね」というような読み変えや、各階層のレベル感などの擦り合わせをする機会を設けることにより、定義内容についての認識の共有化を行って頂きました。
岩崎:
その中で、何か気づかれたことなどはありましたか。
赤澤:
当時、印象的だったのは人事側が想定していた期待役割と現場の声に、一部差異があったことです。具体的に言いますと…弊社の制度ではMグレード以上(=管理専門職位)の社員は組織マネジメントをするライン職位と、専門性を発揮して事業推進を牽引するスペシャリスト職位に分かれております。当然、スペシャリスト職位には職種ごと(営業なら営業、技術なら技術)の専門性が求められると思っていました。ところが、一見矛盾するようですが、専門性と同時にゼネラリティを求めているという声が出てきたのです。
岩崎:
それぞれの職種に紐付く専門性が求められるかと思ったら、共通したニーズがあったということですね。それは例えばどういったことでしょうか。
赤澤:
職種ごとの専門性がベースとして求められることは間違いないのですが、例えばプロジェクトチームを取りまとめるコミュニケーション力や、社外のキーパーソンとの折衝といった部分への期待が予想以上に大きかったのです。
スペシャリスト職位も“一匹狼的な仕事の仕方”をするのではなく、メンバーを巻き込みながら組織運営を牽引していくことが期待されているのだと感じました。そのように「組織やチームで仕事をしていくんだ」という意識が当時の社内で高まってきていたことは言えると思います。
マネジメント力強化について
岩崎:
そうした経緯を受けて、グレードが上がったときの階層別研修と、目的別研修という2つのカテゴリーでピープルマネジメントの教育を配しているわけですね。
今年度の3つのテーマにおいてもマネジメント力強化が一番に挙がっていますが、ここを会社の取り組みとして重視している点について、もう少しお話いただけますか?
赤澤:
3年前にトップメッセージとしてピープルマネジメントという言葉が出たことによって、マネジメント教育への取り組みが本格化したと思います。
山田:
それに加えて、2006年と2009年に実施した組織診断・社員満足度調査の結果も関係しています。
特徴的な結果の1つは、人財の「育成」に対する期待の声が多かったということです。
我々人財育成部門も、現場のライン職も、「組織の業績をあげることはもちろん大事だが、メンバーをどう育てていくか、どうモチベートしていくかも改めて大事にしていかなければならない」、「個人ではなくチームでビジネスを進めるようにシフトしていかなければならない」という認識をあらためて持った次第です。
岩崎:
チームマネジメントに対する危機感があって、それがメッセージとして出てきたということですね。
マネージャー層への研修について
岩崎:
階層別研修と目的別研修では、具体的にはどんな研修をご提供されていますか?
赤澤:
階層別教育では、新任課長を対象に目標設定を含めた考課者トレーニングとマネジメントの役割認識を行っています。新任部長には事業に対する責任が加わりますので、戦略思考と変革リーダーシップのベース部分を理解してもらうようにしています。
岩崎:
新任部長研修では、会社の外部環境を分析し、どのような戦略をたてるかということをやっているそうですね。
赤澤:
はい。
分析をした後で「では自分の部をどうマネジメントしていくのか?」という気持ちや意識面の強化も行っています。
岩崎:
まさに「役割認識」ですね。今ご説明いただいた階層別研修をベースにしながら、目的別研修でスキルを付加していくという構造になっているということでしょうか?
赤 澤 様
赤澤:
そのとおりです。また、個々人が発揮できているスキルは何か?もっと強
化しなければならないスキルは何か?ということを調べるために、3年前
から360度フィードバックを始めました。ここで出てきた結果から、弊社
のマネージャー陣に不足している部分を目的別教育の内容に反映させ
て、「階層別教育でベース理解をして、目的別教育で更なる能力強化を
支援する」という流れを作りました。
岩崎:
しっかりとPDCAをまわされているという印象です。
まずは設計し、やってみて、その後360度フィードバックを行い、結果と
してマネジメントに能力開発の余地があるということで、マネジメント強化
研修を入れてらっしゃる。そうやって新たな課題を見つけて、研修に反
映していらっしゃるんですね。
赤澤:
360度フィードバックは本人だけでなく上司・部下・同僚など多くの方の協力によって実施されますので、「フィードバックだけやりっぱなし」というわけにはいかないという気持ちもありました。
岩崎:
実際に目的別研修を、今年度は弊社で9回やらせていただいています。その中のコーチング研修に参加された方の中に「自分はすごく部下の話を聞いているつもりだったけれども、360度の結果が違ったので、この研修に来ました」という方がいました。また変革リーダーシップの研修では「自分は変革という項目が低かったので、参加しました」という方もいました。実施した360度フィードバックの結果と研修が、ご本人の中でつながっているのだと思います。
赤澤:
そう思ってくれる方が増えてくれるといいですね。
育成風土を作る取り組み
岩崎:
御社は環境変化が激しい業界でいらっしゃいますので、業績へのプレッシャーが高いのではないかと思います。業績をあげてもらいたいという期待があると同時に、職場を巻き込んで育成にも目を向けてもらいたいというメッセージを発するとなると、人財開発部門としても難しさがあるのではないでしょうか。メッセージを出す工夫や努力はどんな風にされていらっしゃいますか。
山田:
“巻き込み”という表現を使うとすれば、「人財育成施策に“巻きこまれるといいことがある”」という効果やメリットを示すことが重要だと思っています。また、人財育成を“やって良かった”という体験していただける場をつくることも、非常に重要だと考えています。
例えば研修を受けて半年くらい経って、その人の考え方や行動が変わってきたとします。本人が「前よりもちょっとだけ上手くいくようになったかもしれない」と体感できたり、周囲にいる上司や部下が「何か前よりも、この人との仕事がやりやすくなった」と感じられるならば、それは“やって良かった”という成功体験だと思います。
そのような成功体験が、個人単位だけでなく組織単位でも経験できれば、人財育成施策を行う価値があると感じていただけると思います。きっかけは会社の提供する研修でもいいですし、OJTを通して人が育つということでもいいと思います。
ただ、研修やOJTの効果をどうやって示すかは課題です。忙しい中で研修に参加している社員に、その成果は示せているだろうか?という意味でのジレンマは持っています。
赤澤:
「研修で学んだことが役に立った」「やってみて良かった」という場を積み重ねていって、組織として人を育てていく風土を醸成していきたいですね。
過去には、研修にエントリーしても無断欠席したり、上司も部下の無断欠席を知らなかったりということが往々にしてありました。育成風土があるとは言い難い状況です。
これに対する打ち手として、目的別教育の受講募集方法を「上司による選抜」に変更しました。それは、上司が研修講座ラインナップを見ながら「誰に、何の研修を受けさせようか?」と考えて頂きたいというメッセージを仕組みにした訳です。さらに「自分が選んだ部下を、研修に送り出したんだ」という意識を持って頂きたいという意図もありました。
岩崎:
上司の方の意識付けをされたのですね。変化はありましたか。
赤澤:
少しずつ変化が見えてきています。例えば一部からは「この研修、どんなことをやるのかもっと詳しく教えてほしい」という問い合わせが来るようになりましたし、欠席するにしても「ウチのメンバーが今回はこういう理由で受講できないんだけど、彼にはどうしても受講させたいので別日程はないか?」というような連絡が上司から来るようになりました。
当たり前のことですが、こういう草の根的な運動を続けることで育成風土を作れればと思っています。
岩崎:
他に具体的な取り組みはありますか?
赤澤:
はい。昨年度から始めているのが、行動変容における効果測定です。研修前に「この研修の目的は○○です。このスキルを身につけるものなので、今の部下のAさん(=受講予定者)の現状を教えてください」という10項目程度のアンケート回答を上司にお願いしています。そして研修実施3ヵ月後に、同じ質問項目に回答してもらいます。
そういう仕組みを準備することで、上司の目がメンバー育成に向かう時間が少しでもできれば良いと考えたのです。もちろん、研修効果測定という観点からも意味はあると思っています。
その延長線上で、研修だけでなく、業務を遂行していく上での案件アサインや、OJTの部分でも育成について意識してくれるようになればと思います。
岩崎:
1回目と2回目の効果測定で、点数の変化はありましたか?
赤澤:
ほとんどの受講者が、点数があがっていました。
岩崎:
それはすごいですね。つまり研修に行く前と行った後ではそこの行動が良い方向に変化しているということですね。そのあたりをフィードバックすることで、また次につながりますね。
研修を実施して
岩崎:
実際に研修を実施させていただきまして、弊社に対する感想や印象を教えていただけますか。
赤澤:
御社のプログラム内容をベースにしながら弊社の事情を組み込んで頂き、受講者が現場で直面しているであろうと思われる内容にアレンジして頂いていると思います。それをわかりやすい講義で、腹落ちさせて頂いているので、非常に助かっています。
あと、マネジメントというのはつながりがあるものですので、「マネジメント」「コーチング」「リーダーシップ」の3つのプログラムを、同じ会社、同じ講師の方にご担当いただくことで、それぞれのテーマがより強い連動性を帯びてきますし、次年度以降のブラッシュアップもしやすくなると感じています。
岩崎:
御社だけではないのですが、マネージャーを長くやっていらっしゃると、自分の経験が全てになる傾向があります。他のマネージャーとマネジメントについて話す機会は少ないので、「こんな(困った)部下がいる!」と感じることがあったとしても、客観的な見解を得るチャンスが少なくなります。そうすると、どうしても他者のせいになってしまって、「自分はやっているのだけど、部下が変わらない」という発想になりがちなんです。
そこで「与えられたリソースをどうにか活かすのがマネジメントですよ」という投げかけをさせて頂くと、御社の受講者の皆様は、素直に受け止めて考えていらっしゃいますね。たぶん皆さん、現場で迷ったり悩んだり、すごく苦労されていらっしゃるんですね。ですからこちらとしては、その状況やお悩みを整理してあげるだけで、自力で解決に向けたアクションを進めることができるだろうなという印象を持っています。
碓 田 様
碓田:
そうした受講者とのやり取りを拝見していても、岩崎先生のファシリテーションには非常に安心感があります。例えば、受講者からの「ウチの部門では○○という状況なんですけど…」というような個別質問が出ると、「なるほど」と一旦受け止めて下さった上で「他の皆さん(=受講者)はどうですか?」と、全体で共有できるように展開して頂いています。これは受講者にとって、別部署のマネージャーの悩みだけでなく、その解決へのヒントを共有できるという大きな学びの時間となります。
受講者からの個別質問を「生きた事例」として展開して頂きつつ、なおかつ予定しているプログラム内容を決まった時間内で消化することも考慮して研修を進めて頂けるので、本当に有り難いです。
岩崎:
最近は参加者が、研修の場を信頼してくれて、かなり自由な発言の場が増えてきていますね。皆さんの想いが出てきて、それを1セッションずっと聞いていることもあります。
碓田:
そうですね。あと、トリの目モデルがわかりやすいことも魅力の1つです。コーチングで言えば、5つのステップに切り分けをしてステップごとのポイントを明示して頂いています。そのモデルに基づきながら講座が進んでいきますので、今どこのステップにいるのかが理解しやすいと思います。
さらに、「自身の気づきを促してくれるモデルである」とも感じられます。例えば「自分は第一ステップの“人間関係を作る”というところができていなかった。だから、後ろのステップで課題を納得させようと頑張っても、部下に伝わりくくなっていたのかもしれない…」というように、気づきを得やすいのではないかと感じています。
岩崎:
そうですね。変革リーダーシップ、マネジメント、コーチングは全部連動しているので、レビューにもなっていると思います。変革リーダーシップ研修を受けている方で、昨年度のコーチング研修に来た方がいらっしゃいましたよね。「リーダーシップのこの部分と、コーチング研修で学んだことがリンクしているんですね」とおっしゃって頂けました。そういう意味では、全部セットになるのでシリーズで採用くださっているのはいいかもしれないですね。
今後の取り組みと人財育成にかける思い
岩崎:
今後新たに注力されようとしていることなどはありますか?
山田:
仕事を通じて個人も組織も成長していけるように、我々(人財開発部)は何ができるのか?ということを念頭に置いて、色々と試行錯誤していきたいです。人間関係ができていれば仕事も楽しいと思いますし、苦労も乗り越えられると思います。会社はビジネスをやるところという大前提はありますが、人と人とのつながりを育てながら、お互いの意見をぶつけ合って議論をして握手して終われるような風土を作っていきたいと思っています。
赤澤:
まさにそのとおりだと思います。社内の信頼関係は仕事を通じて生まれると思いますし、仕事上の信頼関係が生まれるからこそ、仕事も楽しくなるんじゃないでしょうか。トリの目コーチングモデルにおいて信頼関係がベースであるように、やはり大事なのは信頼関係だと思います。
岩崎:
素晴らしいですね。
「仕事を通じて信頼関係を育み、人と組織の成長を目指す」ということでしょうか。
本日はどうもありがとうございました。




